BLOG

2026/09/08 13:56

2015年版

 三重県民手帳についてその存在自体が初耳であった2014年春。それもそのはずで約10年もの間、県民手帳は作られていませんでした。鈴木英敬知事以前の北川県政の時代に県の外郭団体は廃止され、県民手帳を製作していた統計協会も無くなる中で三重県民手帳の存在も忘れられていきました。しかし2014年には各県で作られる県民手帳が静かなブームとなっていました。県民手帳は手帳のスケジュールやカレンダー、書き込み部分としての手帳機能の他に各県の統計情報・名産品・各市町情報・ご当地自慢といった県独自の情報が数十ページ掲載されているのが大きな特徴です。県民手帳の購入者はおのおのの県民がほとんど9割以上を占めています。2015年には東京のLOFTで全国の県民手帳を一堂に会して販売するブースが設置されるほどに盛り上がっていました。
 2014年の4月、鈴木英敬知事は三重県県民手帳が作られていないことを知り、わが県の県民手帳を復活させようと号令をかけ10年ぶりに復活することになりました。その製作方式はいわゆる「ゼロ円事業」。県は監修を行いデータは無償で渡すし、最大限の協力はするがお金は出さない。2015年版のスポンサーは5社集まりましたが、売れなければ赤字は組合が負担。印刷工業組合の責任で製作し販売するという契約でした。紆余曲折した結果、正式に三重県印刷工業組合の受注が確定したのが6月初旬。組合本体が販売を行い、青年部が製作を行うという体制でいよいよプロジェクトは動き出しました。
 何もかもが手探りでの船出。津市のS印刷に青年部が集まり、夜中まで議論を交わして復活初年度の企画を練る日々。やっと決まったコンセプトは、「三重県をもっと好きになる」。三重県愛を刺激する愛情あふれる手帳を作ろうということに決定しました。そのいくつの代表的なものを紹介すると、

・カバーの箔押しに忍者文字を使うこと。※
・忍者文字で「あいするみえ」と6文字で表現。
・週間カレンダーの右上に三重男のつぶやきと題し豆知識を55個掲載する。
・見開きで三重の素晴らしい場所を紹介するグラビアページを作る。
・各市町の情報を充実させ、基本情報+各市町の特徴を文章で掲載する。
。三重県全体の情報を満遍なく掲載することを心掛ける。

 このようなことを手探りで決め短期間で製作することになり初年度の発行部数は約5000冊作ることに決定しました。

2016年版

 2015年版の三重県民手帳は10年ぶりの復活という事もあり、あっという間に完売して望外の喜びとなりました。手帳を購入したい人が津から伊勢にまで電話をかけてきて、組合加盟会社に在庫を確認するほどに盛り上がりました。いやが上にも2016年版に期待が高まる中、この年はG7のサミットが三重県の伊勢志摩地方で開催される年であることから、プレミアム仕様のカバーを1000冊限定で制作し、伊勢志摩サミット開催記念としてスタンダードカバー3色と共に発売しました。
 プレミアム仕様のカバーは真珠と県章を織り交ぜたオリジナルのデザインで、シルクスクリーン印刷で作られました。そのポップなデザインと限定販売の希少性もあり、発売日に完売する店舗が続出しました。発売日に店頭からプレミアムカバーの手帳が消えたことから、組合事務局にお問い合わせの電話を多数いただき、反響の大きさと共に反省もあり。。
 この年から三重県民手帳の代名詞とも言えるパラパラ漫画が採用され、栄えある初回は、二見の夫婦岩の間から登る朝日を表現して好評を博しました。また三重男のつぶやきは三重人のつぶやきと改められ、思わずくすっとなるような小ネタが満載で定番となっていきます。またグラビアは英虞湾の空撮写真、三重ブランド15個の紹介など二年目の紙面の充実は目覚ましいものがありました。


2017年版

 三重県民手帳3年目は新たな試みを始めた記念すべき年でした。それは表紙カバーに三重の伝統工芸品を採用する事。多くの候補の中から選んだのは、津市の「伊勢木綿」でした。
 津市一身田にある臼井織布さんで作られる伊勢木綿は1反(13m)を織り上げるのに1日かかるほどの貴重な布。そのカラフルな色合いの布を4種類使ったカバーを制作しました。
 全国の県民手帳ではほぼ見られない布製カバーをいち早く採用し、木綿の柔らかい風合いが感じられる三重県らしいカバーは大変好評で、伝統工芸品の採用はその後の三重県民手帳のトレンドとなっていきます。
 我々印刷工業組合が、三重県愛を刺激することや三重県のより良い産品を紹介すること、三重の人々の素晴らしい取り組み、職人さんの仕事、三重に住む若い人を応援したい。そのような三重県の良さを紹介するツールとして三重県民手帳を位置づけることがはっきりと見えてきた3年目の手帳制作となりました。
 ちなみに、この漣という名のカバー生地は伊勢志摩サミットにおける贈答用おみやげとして使われた柄で、伊勢木綿の座布団の生地に使われました。手帳発売の際、そのことをアナウンスしないところが印刷工業組合の不器用で奥ゆかしい所かも……


2018年版

 3年が経過して順調に部数を伸ばしてきた三重県民手帳の最大の成功ともいえる年が鈴鹿の伝統工芸品ある「伊勢型紙」をカバーに採用することになった2018年版でした。
 「伊勢型紙」とは江戸時代に最盛期を迎え、主に着物を染める際の型紙として使われてきました。三重県民手帳のカバーは伊勢型紙の本来の用途である染型紙を彫刻していただき、それを木綿に染めることで作っていただきました。江戸時代にはそれぞれにデザイン・彫刻・染色という分業で仕事がなされていましたが、今回は若手の女性彫師である那須恵子さんに柄のデザインも考えていただき、彫刻もしていただきました。那須さんの描いた柄は、赤はミエという文字が花のように描かれ、緑はヨレた三本の縦縞が並ぶことで三重をイメージし、銀の箔押しは細かい♡が無数に彫刻されています。染めの作業は東京の染屋さんにお願いして完成に漕ぎつけ手帳に落とし込むことができました。
 2018年の印刷工業組合の新年互例会にお越しいただいた当時の三重県知事であった鈴木英敬氏(現衆議院議員)がお話しされたエピソードを紹介すると、「ある日の朝、いつものように津市のトレーニングジムにいましてね。ランニングマシーンの所で一緒にトレーニングしていた市長からテレビに三重県のことが紹介されているよ、と言われました。NHKのおはよう日本で全国の県民手帳が紹介される中で三重県民手帳を中心に取り上げていただいている映像を見て大変誇らしく思いました。」との事。
 オンエアー当日の組合事務局の電話は終日鳴りやむことがありませんでしたので、反響はとても大きかったのが印象的でした。


2019年版

 反響の大きかった2018年を受け、この年は「伊賀組みひも」を手帳に採用しました。
 「伊賀組みひも」は着物の帯どめとして古くから使用されてきた、国指定の伝統工芸品です。近年は帯どめ以外でも様々な活用を考案し、一例では、伊賀の女子サッカーチーム「伊賀くのいち」で髪留めとして使われています。この組みひもは中にゴムが入ることで伸縮性を持たせています。
 2019年は、この新しい事に挑戦する伊賀組紐協同組合と県民手帳のコラボレーション企画が実現しました。そして組合員である松島組紐店様の協力のもと、1つは純粋な赤の組みひもを、もう1つはゴムが入った組みひも(髪留めの組みひもを応用したもの)を2色用意しました。アクセントとして、飾りに縁起の良い吉祥結びの組みひもを添えた3種の2019年版の手帳は組紐職人の技により味わい深いものになりました。
 「本物の伝統工芸品を使った三重県民手帳」それは三重県民の皆様に三重の素晴らしい産業や匠の技を紹介するツールとして身近にそれを感じていただきたい。毎年の努力と挑戦する心でコラボレーションする楽しさを組合員が体験できることが、手帳を製作する醍醐味となってきたように感じた2019年版となりました。


2020年版

 三重の伝統工芸品をカバーに採用してから4年目となりました。毎年どんな表紙カバーになるのかと楽しみにされている県民の方々のお声を聞き、身が引き締まる思いで準備をするようになりました。そんな2020年版は松阪もめんを使わせていただくことになりました。
 手帳サイズにカバーを落とし込むとき、毎年どうしても布の幅が短くギリギリの寸法取りになりがちなところを広幅の余裕のある布を用意していただいたことで松阪もめんの特徴である「藍の縦縞」が綺麗にまっすぐ表現され、草木染の自然な藍の魅力と相まって、完成度抜群のカバーに仕上がりました。また江戸期・安政時代の縞帳(江戸時代の柄見本帳)から復刻したデザインと、これぞ松阪もめんといえる鰹縞の計2案を採用しました。
 また復刻デザインの着物も制作し、ポスター・チラシの販促ツールにも活用させていただきました。ちなみに伊勢の組合員Ⅽ印刷のT社長のお嬢様にモデルとなっていただき復刻デザインの着物を着て写真に収まっていただきました。
 他にもこの年から三重県民手帳公式Twitterをはじめ、宣伝活動にSNSを活用することとなりました。


2021年版

 三重の伝統工芸品をカバーに採用してから5年目、伊勢型紙を使用したオリジナルカバーが再び登場しました。伊勢型紙彫師である那須恵子さんに今回もデザイン・彫刻をお願いしました。ピンクが基調の市松模様にワンポイントの♡が可愛い「市松」、三重の鳥であるシロチドリをモチーフにしたグリーンの「千鳥」の二種類のカバーを用意しました。
 2021年開催の三重とこわか国体・とこわか大会を特集した紙面となり、さながら国体手帳の趣き。カバーの裏面には銀の箔押しでマスコットキャラクターが描かれているのが、可愛らしいアクセントになっている手帳に仕上がりました。


2022年版

 昨年の三重県開催のとこわか国体では、同時にとこわか大会として障がい者スポーツの大会も通常開催されました。スポーツを通じ三重県に多くの関係者がお越しになった翌年の特集として「日本一のバリアフリー観光推進県」を宣言している三重県でのバリアフリーについての試みを特集しました。「行けるところ」から「行きたいところ」へ、というこの言葉は象徴的だと感じています。誰もが行ける・体験できる観光スポットが多数紹介されました。
 カバーについてはデザイナー坪井健さんが描いたデザインを伊勢型紙職人の那須恵子さんが彫刻した型紙をデジタル処理し、スクリーン印刷で表現した二人のコラボレーションカバーを用意しました。「三重格子」というネーミングで2色が作られ好評でした。


2023年版

 自然との共生やSDGsの観点から三重の森や木を企画の中心に据えたこの年の手帳は三重県の木である「神宮スギ」の栞を付録として封入しました。本物の神宮スギを薄くスライスし、和紙と貼り合わせた栞は一枚一枚が全て微妙に違い、同じものは1つもないオンリーワンの貴重な栞となりました。カバーは塩化ビニール(エコの観点から、製造で生じる廃棄する端材を再利用)に坪井健さんが三重の動物「カモシカ」に森を絡めたポップなデザインのカバーに仕上げていただきました。
 ちなみにこの神宮スギの栞は、神宮スギでもさらに貴重な御山杉が使われています。御山杉とは神域と言われる伊勢神宮のさらに限られた場所でとれた木材で、滅多に市場には出てこない貴重な木材で栞は作られていたのです。
 この年からかねて要望の多かった週間カレンダー部分を翌年3月まで延ばし年度末対応の手帳としました。


2024年版

 記念すべき10周年を迎えた三重県民手帳。10度目の製作となる今回は「三重の誇る産業から人」へと応援する視点を変えて手帳の製作を行いました。三重県立飯野高校の応用デザイン科の生徒さんにカバーのデザインを考えていただき実際の商品として仕上げ、販売まで持っていくこと。このプロジェクトが学生さんの学びと成長に資すると考えコラボレーションする事となりました。飯野高校の関係者の皆様、生徒さんの意欲的なデザイン、それをプロの観点から精査・評価する人々と、多くの人の協力のもと完成までこぎつけることが出来ました。
 とりわけ生徒と関係者のディスカッションの場を設け、2時間ほどの交流を飯野高校で行った場面は三重県印刷工業組合の人間として、とても楽しい時間となりました。
 数ある候補の中から優秀な作品が2種類カバーに採用されました。採用案をさらにプロと共に学生さん2名には最後まで製品化に関わってもらいました。
 メモリアルイヤーにふさわしいコラボレーション企画は地域の若者と触れ合う貴重な機会となりました。


2025年版

 11年目は変化の年。この年は大きく制作の方針を変えて、カバーに留まらず内容を大胆に刷新しようと考えました。
 三重県の情報をより楽しく、情報の伝え方も鮮度を重視する。その方針の下、三重弁辞書を核に、ふがまるちゃんの撮影したグラビア、斎宮の記事はより深く、資料編の記事も焼き直しは極力避けて楽しいものに。手書きのスケジュール帳+三重のディープな情報の両立を目指して知恵を絞りました。皇學館大学の齋藤平(現学長)先生の全面協力を得て約800もの三重弁の言葉を掲載できたことは、感謝してもしきれません。またカバーは三重弁を大胆に使用し、「何やこれは?」という驚きを持ってもらえるデザインに仕上がりました。
 あるブロガーの方は35もの県民手帳のレビューを行い、その詳細な分析から、2025年版の全国の県民手帳の中で三重県民手帳がナンバーワン!全国一だと評価していただいたのは大変嬉しいことでした。


2026年版

作成中